言語学オリンピックとは?

2021年7月28日 更新

国際言語学オリンピックとは?

国際言語学オリンピック(略称 IOL)は主に中等教育課程にある生徒を対象とした国際科学オリンピックの一つです.2003年にスタートし,毎年夏に開催されています.

IOLの他に,各国や地域で大会が開かれています.IOL日本代表を志す出場者が直接関与する大会は以下の3つです.それぞれが独立した一つの大会で,独自の運営組織を持ち,問題を作り,賞を発行しています.と同時に,JOLの成績はAPLO日本代表選抜に,APLOの成績はIOL日本代表選抜に使われます.したがって,IOL日本代表を目指す出場者は,JOLとAPLOに出場し,優秀な成績を収める必要があります.

日本言語学オリンピック
JOLlogo

2021年12月29日(水) リモート

数十名程度選抜 → APLO

アジア太平洋言語学オリンピック
APLOlogo

2022年3月?

8名選抜 → IOL

国際言語学オリンピック
IOLlogo

2022年夏 マン島

JOLは主に日本国内に向けた大会で,国際本部から認可を受けた当委員会が運営しています.JOLは,広い層の言語学・言語学オリンピックへの関心を高めるため,そして受験料が日本代表の金銭的補助に直結するため,代表選抜とは別にオープン枠を設けており,中高生以下だけでなく,大学生以上の方でも参加ができます (APLOやIOLには参加資格の制限があります).

アジア太平洋言語学オリンピック(略称 APLO)は,2019年に設置されたアジア太平洋地域の地区大会です.APLOはアジア太平洋言語学オリンピック委員会によって運営され,アジア太平洋地域の言語学オリンピック活動を繋げ,奨励する役割を果たしています.

私たちの目的

当委員会は,

  1. 言語学の楽しさ・面白さを伝え,中高生や一般の方の言語学・言語・言語多様性への関心を高めること
  2. 中高生が言語分野の科学・技術の専門性に触れる機会を用意し,これらの進路・職へ進む選択肢を与えること
  3. 言語学に興味を持つ世界中の若者たちの友好関係・国際理解・競技精神を奨励すること

を目的とし,そのために,

  1. 多くの人の目に留まるよう,日本国内における言語学オリンピックを運営し続け,規模を拡大させる
  2. 出場者を動機付け,言語・言語学に対する柔軟な考え方を磨き,言語分析の技術を高める
  3. 言語学オリンピック風の,自己完結的な言語パズルというジャンルを発展させる

活動をしています.

とりわけ,言語学は日本の中高のカリキュラムでは直接触れることがありません.したがって,私たちはまず何よりも,言語学を知ってもらい,その魅力を伝えることを第一の目的としています.

問題の内容

出場を考えている方へ

  • 問題は謎解きが好きなら確実に楽しめる,言語を題材にしたパズルです.
  • 「暗記力」は必要ありません.答案を書くために必要な情報はすべて問題の中に隠されています.語学試験や弁論大会とは異なり,英語やその他特定の言語を話したり書いたりするための運用能力は求められません.
  • 習うより慣れろ,という言葉があります.まずは問題に触れてみてください.
  • 言語学は中高の科目にないので,多くの人がゼロからのスタートです.
  • ですが,得意かどうかは気にせず,ぜひ問題を楽しんでください.新しい問題を用意して大会でお待ちしております.

お試し問題過去問はこちら

特徴

  • 問題は実際の言語研究で行われる分析に似ていて,「初めて見る言語のデータから隠れた法則を解き明かす」というものです.謎解きやパズルのように,分析力,情報処理能力,論理的思考,試行錯誤する力が求められます.この点で,数学やプログラミングと根本となる能力が似ていると思われます.
  • 言語学オリンピックの問題の特筆すべき点は,問題の自己完結性です.答案を書くために必要な情報はすべて問題の中に隠されています.したがって「暗記力」は必要ありません.語学試験や弁論大会とは異なり,英語やその他特定の言語を話したり書いたりするための運用能力は求められません.言語の知識はむしろ,言語分析にとって重要な「相対的な世界観」を構築するのに役立ちます.
  • 明かすべき法則は必ず不透明な形で提示されます.したがって,頭の中にある知識をそのまま使ったり,問題のどこかからコピー&ペーストするだけでは良い点を取ることができません.良い評価を得るには,データを元に帰納的推論を用いて法則の仮説を一般化し,仮説演繹法で法則の仮説の検証を行う,という試行錯誤のプロセスが求められます.
  • APLO, IOLではさらに,見つけた法則を文章や表で説明することが採点の対象になります.主体的な思考力・表現力が求められます.
  • 以上の求められる能力というのは,言語学オリンピックの問題を解くことで鍛えられる能力でもあると考えられます.

例題

お試し問題集が言語学オリンピックがどういうものかをつかむのに最適です.1問例題をお示しします.その他,過去問などはこちらからご覧になれます

以下はインドネシア語の単語とその日本語訳です.

インドネシア語日本語訳
jalan
berjalan歩く
berkeringat汗をかく
keringatan汗びっしょり
nafas
duriとげ

(a) keringat を日本語に訳してください.
(b) 「息をする」「とげまみれ」をそれぞれインドネシア語に訳してください.

(a) keringat は berkeringat 「汗をかく」と keringatan 「汗びっしょり」に共通して含まれているもの.
(b) 単語をパーツ(形態素)に分解して考えてみましょう.

シンプルな形ber-なんとかなんとか-an
jalan
「道」
berjalan
「歩く」
berkeringat
「汗をかく」
keringatan
「汗びっしょり」
nafas
「息」
duri
「とげ」

(a) keringat : 汗
(b1) 息をする : bernafas
(b2) とげまみれ : durian (=ドリアンのこと)

ber- をつけると動詞になる.-an をつけると「~だらけ」という意味になる.

※なお,偶然インドネシア語を知っていればこの問題は解けてしまいますが,大会本番では偶然知っていることがないよう,極めて認知度の低い言語が出題されます.エカリ語,ズニ語,キリヴィラ語,アビリバ語(= イクウェレ語のオバキリ方言話者の用いる隠語),リクバクチァ語など……(いずれもIOL2021個人戦に出題された言語).こうしたいわゆる少数言語への関心を高めることも,言語学オリンピックの活動目的の一つです.

競技の基本的なレギュレーション

JOLは2時間,APLOは5時間,IOL(個人戦)は6時間かけて5問からなる問題セットを解きます(ただしJOLは5問とは限らない).

特筆すべきは,IOLでは個人戦の他に4人チームで解く団体戦が存在することです.IOL団体戦は3-4時間で行われ,大量のデータを手分けして分析します.各々の問題を解く力に加えて,4人のチームワークが求められます.

変遷

1965 モスクワ言語学オリンピック 初の言語学オリンピック
2003 第一回国際言語学オリンピック
2013 第十回国際言語学オリンピック 日本代表が始めて出場
2016 第一回国際言語学オリンピック日本代表選抜筆記試験 = 後の日本言語学オリンピック
2019 第一回アジア太平洋言語学オリンピック

言語学オリンピックの発端は1965年に開催された『モスクワ言語学オリンピック』です.最初はロシアだけで行われていましたが,1980年代以降ブルガリアを始めとする東欧諸国やアメリカなどでも国ごとの大会が始まりました.その後2003年からは『国際言語学オリンピック』(英 International Linguistics Olympiad, 略称 IOL)が開かれるようになりました.

第一回国際言語学オリンピックはブルガリアで開かれ,参加国は6カ国でした.その後徐々に参加国は増えていき,2021年までに出場したことのある国は41カ国/地域に及びます.ラトビアを本部とし,リモートで行われたIOL2021には34カ国/地域から216人が出場しました.

日本が初めて国際大会に出場したのは2012年 スロベニア リュブリャナで行われたIOL2012です.以来日本は毎年度国際大会に代表を送り続けています.国際言語学オリンピック日本委員会は2015年度から活動を始めました.応募者は2016年時点で約20名でしたが,2020年12月に行われたJOL2021では245名(うち代表選抜参加者178名)になっています.

日本代表になるには

  1. 受験案内をよく読み,JOLに応募する
  2. よく学習をする
  3. JOL当日に無事参加し,良い成績を取ってAPLOの出場権を得る
  4. APLO当日に無事参加し,良い成績を取る

JOLは例年9月末から募集を開始し,11月中旬に説明会(または説明資料の公開)を開いた後,12月末に本番があります.APLOは3月下旬に本番があります.

日本代表になったら

選ばれた日本代表向けには4月から大会当日までの間に合同練習会を数回開いています.合同練習会では過去の大会経験者を交えて一緒に問題を解きながらお互いの知識や解き方を教え合ったり,言語調査を行っている研究者の方を招いて講義を受けたりします.

2021年には Joint Asian Training (アジア合同練習会)をオンラインで開き,韓国,インド,香港,台湾,オーストラリアの代表たちを交えてレクチャーを行いました.Discord (チャット)を用いた交流も盛んに行われました.

過去の大会のようす

IOL現地報告

日本チームの国際大会成績

広報資料

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